たけし映画「首」感想・レビュー「全員、ダサい」

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見てきました。前回見たのがゴジラ-1.0だったので、東宝の映画を2回連続で見たのはいつぶりだろうという感じなのですが、邦画が盛り上がっていますね。
前半はネタバレなし、後半からネタバレで語っていきたいと思います。

この映画の予告編を見たとき、私を含む多くの人があっ!と思ったのが「戦国版アウトレイジ」というイメージではないでしょうか。

なるほどそれは面白そうだと私も期待して見に行きました。そしてたけし監督がインタビュー等で語っていたのが
「大河ドラマなどは綺麗ごとばかりやっていて人間のドロドロした部分を描かない。本当のところは違うのではないか」
というようなことを語っていて、それは確かにその通りだと思い、それを期待して見に行きました。
私自身、時代劇や大河ドラマの類にそこまで思い入れはない方で、大河ドラマについては三谷幸喜脚本の年だけしっかり見るくらいのスタンスなので、この方向性の時代劇はぜひ見てみたいと思っていました。

「戦国版アウトレイジ」とはまた違う趣

©️ 2023 KADOKAWA ©️ T.N GON Co.,Ltd.

実際に見てみると思ってたのとちょっと、いやだいぶ違うテイストの作品だということがわかりました。アウトレイジという作品はたけし映画のキャリアの中でも比較的、わかりやすくスカッと見れる作品でした。また主人公のたけし演じる大友は悪い人ではあるにせよ、ヒーロー然とした格好いいキャラクターでしたし、わかりやすく楽しめてその上にバイオレンスもりもりという作品が広く受け入れられたように思うのですが、「首」は戦国版のそれともまた違った趣でした。

トップの役者陣が作り出すキャラクターが全て面白い

まず最高だったのは日本を代表する豪華な俳優陣がふんだんに登場し、皆の人物がすべて魅力的であることです。

まずは何と言っても加瀬亮の信長。

アウトレイジにおける加瀬亮が大好きだったので、信長もきっと良いに違いないと思ってみたら、期待通り期待以上の狂った信長でした。若干何言ってるかわからない程の尾張訛りも最高でした。

そして受けとなる西島秀俊の明智光秀。色男で優男でありながら、でも裏切るんだよなーという雰囲気w 詳しくは後半のネタバレで。

そして相当ジジイのたけし秀吉。こいつが全く格好良くないw そしてそれを囲む浅野忠信官兵衛と弟の大森南朋トリオ。彼らがコメディタッチを醸し出します。ここに乗れるかどうかがこの映画を楽しめるかどうかの分かれ道かもしれません。

シニカルでコメディ寄り

アウトレイジと比べると全体にコメディ感が漂います。ギャグに近い所もありますがどちらかというと冷笑的で、悲惨すぎる現実を前にヒッチャカメッチャカする人たちがおかしく見えてしまうという構図です。カメラも引きの固定で見せる絵が多く、なんだかこれ「バカ殿」みたいだなと思う瞬間がありましたw そろそろネタバレしたくなってきたので、

・・・ここからネタバレあり・・・

この映画、思ったよりも変な映画でした。

登場人物、全員ダサい

大河ドラマ的なモノへのカウンターが強く意識されていると思うのですが、どうしても戦国武将、過去の歴史の人物は英雄視、神格化される傾向があると思うのですが、そんなわけねーだろっていう語り口で、そのことについては私も乗っかれるので大変楽しく見られました。

この映画の宣伝には「全員、狂ってる」というキャッチコピーが当てられていて、おそらくアウトレイジの「全員、悪人」に乗っかったコピーなんだと思うのですが、もしかするとこの映画「全員、ダサい」という方が正確だと思いますw そこがこの映画の魅力です。

たけし秀吉が「おれは百姓だよ!」とか「字が読めねーんだよ!」とブチギレたりするのは最高でした。家康が飄々と替え玉を立てて生き延びるところとかも可笑しかったw

男色がしっかり描かれている

©️ 2023 KADOKAWA ©️ T.N GON Co.,Ltd.

ホモセクシャルな描写というのがしっかりと描かれているのも面白かったです。そういったものが当時はあったというのは歴史として広く知られていることでありながら、大河ドラマでは決して描かれることのない要素。

その中で光るのが遠藤憲一さん演じる荒木村重。光秀への一途な思いを見せる表情が本物っぽくて、しばらく遠藤憲一さんをそうゆう目で見てしまうくらいのリアリティを感じましたw それに呼応する西島光秀の優男感、でも結局裏切る所、そして信長が森蘭丸や黒人の弥助を好き勝手に扱う傍若無人さ、そして終盤で光秀の突然の告白にめっちゃ喜ぶ人間臭さw
この男性同士の三角関係がしっかりと描かれていたのは今まで他に見たことがないもので新鮮に楽しめました。

全体通してハチャメチャなカオス感、それに乗れるかどうか

ストーリーは歴史的に大変有名なスペクタクルをなぞる話でありながら、なんだか個別のエピソードは単発的でドライで、さっきのシーン何だったんだ?というギャグのようなシーンもあったりして、淡々と進んでいく印象です。

でも退屈かというとそんなことはなく、それぞれのシーンで役者の魅力は爆発していて、思わず笑ってしまうようなシーンもおぞましいシーンもあり、トータルでは楽しいという不思議な映画でした。

木村祐一演じる曽呂利新左衛門というキャラクターが一人、普通の関西弁で武将たちをまるで現代人のような目線で見て普通に語っている感じも面白かった。

冷静に考えるとめちゃくちゃ尾張訛りの信長なのに他の人物は普通に現代語っぽく話していたり、百姓が米を隠すリアリティを描写したと思ったら、足軽マラソンみたいなシーンで百姓が武将に握り飯を配給するシーンとか世界観がメチャクチャな感じがあったりと全体的にカオスなのですが、破綻をしているという感じよりは「そうゆうもんなのかも」という謎の納得感もあったりしてこの感覚は不思議でした。

そして最後に秀吉が「首なんか興味ねーんだよ!」と蹴っ飛ばして終わるというオチが最高だったので満足度は高かったです。

ゴジラ-1.0のように手放しで万人にオススメしたい映画とは違うのですが、僕は好きですと伝えたい映画です。

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