今まで見たホラーの中で一番怖かった「ヘレディタリー継承」感想

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21世紀の作品で一番怖いホラーとも称されるのも納得の怖さでした。今までに見た映画の中で一番怖かったのは?と聞かれたらこれと答えるかもしれないくらいに怖かった映画が「ヘレディタリー継承」です。

「ミッドサマー」のアリ・アスター監督の長編デビュー作

自分がこの監督の作品を知ったのは「ミッド・サマー」という映画で世の中的にもかなり話題になった一作、そして最近では「ボーはおそれている」という作品がホアキン・フェニックス主演で公開されています。この作品は大変オススメなのでまずは完全ネタバレで、その後作品の核心には触れない範囲で内容について、そして最後は完全ネタバレで感想を書いていきたいと思います。

<ネタバレなし>

じわじわ怖い&びっくり怖いの波状攻撃

強さにもいろいろな種類があると思います。13日の金曜日のようなスプラッターものだったり、お化け的なもの、その中でも初代リングのようにじわじわと来る強さだったり、呪怨のようなお化け屋敷的なものだったり、非お化けで人間のサイコな部分の強さが主体の作品だったり・・・。

そんな中で「ヘレディタリー継承」はすごく多様な怖さの引き出しを持っています。じっくりとじわじわといやーな怖さが充満してくると思えば、ハッとビビらされる瞬間もあります。

カメラがゆーっくりとパンしてその先にはきっとやなことがある、なんなら大方の予想はついているのにそれをじわじわと映していって、やっぱりソレがあるやないかーい!という展開をしたかと思えば、全く良きせぬタイミングでワッと現れる怖さもあり、ずーっと怖さの気が抜けないです。夢中で見れる一方で早く終わってくれと思う居心地の悪さ。

イット・フォローズという作品はソレが背後でなく前方からゆっくりと白昼堂々と迫ってくる怖さがありました。ミッドサマーでは夜のない世界で開けた白昼にどうどうと嫌なことが起こる怖さがありました。この作品もそれに通ずる怖さがあります。

家庭の怖さがテーマ

ある3世代の家族がメインの登場人物であり舞台であるというのがポイントです。これはすべての人間が共通して持つ普遍的な題材であり、そこにある怖さが描かれます。まず家の中の廊下や部屋の隅の暗がり、そこが怖く見えてしまうというのは欧米と日本で家庭の雰囲気が違うにしろ困ったもので、鑑賞後の生活に影響してしまうという難点がありますw

生まれてくる家庭、親をだれしも選ぶことはできない、その絆というものはある種の呪いとも言えるものであり・・・

そして普遍的なテーマであるがゆえ、主人公たちの行動にある種の共感であったり、境遇への類似性を見出しながらも、それが次第に大きく狂い始めていく・・・

個人的にこの作品で最も印象的だったのは中盤で起こるとてつもなく悲劇的な展開においてある人物が取った行動です。通常の論理・倫理では理解できない行動をするのですが、もしかすると人間これほどまでに最悪のことが起こるとこうゆう行動をしてしまうのかも?という共感を得てしまいました。

今まで自分が映画の人物に対して共感した内容のうち、最も最悪な共感だったように思います。

「怖がってるあなたが一番怖い選手権」新チャンピオン

この選手権のディフェンディングチャンピオンといえば「シャイニング」のシェリー・デュバルさんが有名ですが、それに勝るとも劣らない、いやある意味圧勝している顔の怖さが主演のお母さん役にはあります。

ここからは内容に触れていきますが、できれば全く予備知識がない状態で見てもらった方がよいと思うので興味を持たれた方はここで閉じてぜひ鑑賞してから戻ってきてください。

<ネタバレ>

最も最悪な共感

前半の感想で「最悪な共感」と書いた件ですが、それは中盤の妹の首チョンパを振り返らなかった件。あまりにも最悪で恐ろしいことが後ろで起きたとき、それを人間は目をそらしてしまうということ。そしてそのまま車を運転して帰り、帰ってからもみずにそのまま寝てしまう。
これを見てる観客は「え? 見ないの?」となりそのまま寝てしまうことで「ひょっとして夢か何かなのかも?」という位のたっぷりの間のあとに遠くで聞こえる母の絶叫。この声だけで現実を伝えてその後、道端の首という画的な超絶インパクトで追い打ち。この見せ方には痺れました。この一連のシーンは個人的な映画史に残る1シーンになると思います。

現実と非現実の怖さがハイブリッド

妄想と現実の狭間を揺り動かす展開というのは世の中の映画に数あるパターンですが、この作品は現実の妄想と超常現象をいったり来たりするのも面白かった。夢遊病のくだりが出てきたときに普通の映画だったら「あー、妄想なのね」っていうオチになっていくのが多いと思いますが、そうかと思わせておいて完全なるスーパーナチュラルな現象と結末に向かっていくのが斬新で、最後は、妄想だと思った?ざんねーんという斬新な結末。

最後はなんか良かったのかな?って雰囲気が漂う謎なハッピーエンド。この終わり方はミッドサマーにも通じるものがありますね。

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