The Yellow Monkey 10枚目のアルバム「Sparkle X」は新しくてヴィンテージな傑作

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The Yellow Monkey、10枚目のオリジナルアルバムがリリースされました。
サブスクで聴けるしCDはもう要らないかも?などと一瞬思いましたが、推しの新作を祝わねばと思い直して購入し、CDプレイヤー(今我が家にはPC用の外付けドライブしかない)を使ってBoseの卓上スピーカーで全身に浴びるように聴いて、仕事で使っているヘッドホンでディテールを10周くらい聴いての初日の感想となります。

全体の感想

まず、第一印象。明るい!ド直球!でも新しい!ですね。
こんなに明るいのは、戦時中だなんだと陰キャだった初期を経て「太陽が燃えている」だ「追憶マーメイド」だ「空の青~」だといきなり日向に出てきた「Four Seasons」以来ではないかと。
しかしあの頃から20年以上経ち、年齢もマインドも時代も大きく変わっています。今回はなんといってもロビンの喉の病気があったことが大きく影響をしていて、言ってしまえば、バンドの死、メンバーの死というものの可能性に直面し、それを克服してこれからの人生どれだけのことをやるかという振り切ったポジティブさにあふれています。
死生観のようなものはこれまでの作品にも多く現れたテーマではありましたが、他人事でない自分たちの最期を意識することで前に進むポジティブさが溢れた作品です。
といってもヤケクソな作品なわけではなく、サウンド面では2016年に再集結してから円熟を重ね、アップデートを重ねた進化が結実しています。前作以上にイエローモンキーのド直球、得意技・必殺技というものが惜しげもなく投入されている一方で、今まで聴いたことないような新鮮さを感じるものが多く、これが令和のイエローモンキーなのだという驚きがあります。
サラリとやってのけているけど、これだけの大御所バンドが「らしさ」を失わず、新鮮さも得ているということがどれだけ珍しいことか。

そして今作は前作よりも圧倒的に「アルバム感のあるアルバム」です。というのも前作9999はシングルが徐々にリリースされてもう半分に新曲を合わせてアルバムになったというような工程でしたが、今回は先行リリースされたのが3曲のみ、特に2曲はアルバムの発売も近くなった時期であったこともあり、アルバム丸ごとが新作という作品としてまとまっています。

それでは個別の曲の感想を。

01. SHINE ON

アルバムの1曲目に高らかなロックンロール宣言。イエローモンキーの堂々たる王道を提示し、アルバムのテーマ、バンドの意思表明をしてくれています。ストーンズ的な王道ロックに今までないくらいにストレートな決意表明。なにげにツインギターだったり、新鮮な響きもあります。
キャリアの中でも新しい代表曲の1つとなることでしょう。

02. 罠

そしてアルバムの中でおそらく一番のキラーチューンへとなだれ込む。イエローモンキーの切り札みたいなサウンドで過去作でいうとChelsea GirlだったりI Love You,Babyだったりを思い出しますが、一方で今までに聞いたこと無い新鮮さもあります。アニーはいつものシェイクビートだけどスネアでハネるところをバスでハネてるところに新鮮さを感じたり。
またMVも文句なしに最高です。再集結後のMVの中では一番格好いいかも。第1期には高橋栄樹監督の神MVがひしめいていますが、それらに引けを取らない格好良さ。死神ロビン、ベタだけど最高。

03. ホテルニュートリノ

この曲は2024年の元日にリリースされた曲ですが、アルバムの中に入ってみるとだいぶ異色の1曲。スカ風というそういえば今までなかったよねという曲調と、いつになく高いキーのボーカル。MVの衣装もクラシカルだけど普段は着ないようなアイテムがチョイスされているところにコンセプトを感じる。
ど頭から3曲目まで怒涛の勢いでギアをトップまで上げてくれます。

04. 透明Passenger

爽やかな海風! 丘サーファーイエローモンキー。ドライブで聞きたい。曲の仮タイトルは「新理事」らしい。なるほどこのサビはシン・リジィの「ヤツらは町へ」っぽい。ギターもそれをなぞる感じがまさにそれの心地よさ。そして三国義貴さんの転がるピアノ! 今回のアルバムは三国さん復活アルバムという意味で記念すべきものでもあります。このピアノの独特の存在感は唯一無二ですね。この曲もまたキー高め。カラオケで歌えるかな。

05. Exhaust

イントロから溢れ出すエマワールド感! 本作にはエマ曲が2曲。この曲は作詞がロビン。いい意味でイエローモンキーっぽくなくてクセになる。エマ曲でしか得られない栄養がある。
エマの曲に乗せるときににしか書けないロビンの詩のストレートさが楽しい。
5曲目までずっとテンション高くて明るくて駆け抜ける構成。ここまでのアルバムは今までなかったよね。

06. ドライフルーツ

ここから湿り気ゾーン。オセアニアっていうかどことも分からないエキゾチックな世界観にいかがわしい雰囲気。1stから3rdの頃の匂いを思い出す。何かしらギリギリアウトなことをしているような歌詞w
エロいかがわしい世界感にはヒーセのベースがよく合うアメ横感。三国さんのピアノもまた然り。そしてエマのギターソロでモンキーらしさが炸裂。ライブで聞いたら大化けする予感。

07. Beaver

ゆったりゾーンを進んだ先はなんと童謡?
イエローモンキー史上最もかわいくて子供向きな曲かもしれない。
どストレートに丸裸に響くロビンの声に、ねっとりと絡みつく三国義貴さんのピアノ。
ここで浮き彫りになるのはアルバム全体の死生観。童謡って生きるか死ぬかみたいなプリミティブさがあるように思います。それがこのシンプルなサウンドによってまっすぐ心に響く感じ。
前歯を出した子一等賞。

08. ソナタの暗闇

前2曲を経て静かになったところでこの曲のイントロにつなぐ流れが完璧。先行してリリースされて聴きまくったため新鮮さを失いつつあったけど、みんなが大好きなイエローモンキーの感じでテンション爆上げ。しかしサウンドはソリッドに研ぎ澄まされておりこれも新しいイエローモンキーの一つの完成形。MVも新しくて素敵。ソナタちゃん商品化希望。

09. ラプソディ

事前に曲名を見たときは「じっくり聞かせどころかな?」と思っていたら、思てたんと全くちゃうイントロの開放感。ドラゴンボールのオープニング曲ですか?というようなキラキラ感w
「ん?今おっぱいって言った?」いいえ、「オ・パ(ッキャマラ・ド)」です。
ラプソディってなんだっけ?と思ったところで「これはラプソディ!僕のラプソディ!」と言い聞かせるロビンw そうですかわかりました。これもドライブで聞きたい。疾走感と開放感。

10. Make Over

エマ2曲目。こちらは作詞もエマ。
「エマ作詞作曲の曲をロビンが歌うと化学反応が起きる」ことが5年前の学会で発表されましたが、今回はそれを明るい曲に展開している。
通常コーラスパートはロビンが入れているらしいのですが、この曲では明らかにエマさんの声が入っててニッコリ。
アニーのドラムの炸裂感もあり、エマ曲では「お兄ちゃんのために健気に叩くアニー」への萌えも最近の学会のテーマとなりつつあります。

11. 復活の日

東京ドームで初披露されて、ものすごくストンと胸に響いた1曲。このアルバムのテーマを締めくくるにふさわしい歌詞とロックアンセム感。ここまで王道ロックで応援歌な曲はモンキーでは聴いたことがない。ライブでも本編最後に聴きたい感じもあり、ド頭に持ってくるパターンもやりそうな予感。
この曲が終わった後リピート再生にしているとスムーズにShin Onに繋がって無限にリピートできることに気がついた。聴いたら聴いた分だけ、X回も復活できるというメッセージを受け取りました。人生の節目に聞き続けたい1曲。

といったところで今回はすごいアルバムが出たなという感想です。
1つだけ要望を言わせてもらうと、今回のアルバムにはFour Seasonsにおける月の歌みたいな、吉井和哉のアルバムのRoute69みたいなポジションの曲が無いのが少し残念ではあった。私はあの手の哀愁曲に目がないもので。しかしそれを入れる隙も無いほどにパワフルな曲で埋め尽くされた今回のアルバム、イエローモンキーのキャリアの中でも上位に位置づけることになりそうな予感のする神作品だと思います。

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