オリジナル版を小さい頃にテレビで見て、そのブラックでゾッとするような世界観のファンになった者としてAmazonプライムでの実写化には期待していました。
最重要な喪黒福造のキャストはロバート秋山。見た目から声からそのまんますぎると話題になっていましたが予告編には一抹の不安を感じていました。そして実際に見てみると「なるほどこれは色々まずいことになっている・・・」と思ったので感想を書きます。
笑ゥせぇるすまんの本質的な面白さが薄まっている
まず原作の本質的な面白さとは何かについて話したいと思います。
個人的に原作の面白いところは、「人間の欲求が暴走すると痛い目に遭うという教訓」だと思っています。基本的なストーリーの流れは、
- 何かしらの欲求が満たされず悩む人が出てくる(心のスキマがある)
- 喪黒福造が現れて、その欲求を満たしてくれる(心のスキマが埋まる)
- 欲求が満たされたことに味をしめて自ら暴走してしまう
- 喪黒福造に「ドーン」される
- ひどい目に遭う
というものです。
喪黒福造が提供するサービスは現実にはありえないドラえもんの秘密道具のようで、喪黒福造はブラックなドラえもんみたいな存在かと思います。
毎回それを手にして暴走してしまう人間が出てきますが、その人が抱える境遇、悩みは我々の日常生活にありふれたもので、自分も同じ境遇になったら同じことをしてしまうかも?という共感を得るところにゾッとする怖さがあり、それがこの作品のコアであると思います。
で、今回の実写版はどうなのか、初回の「山本耕史」回、いわばこのシリーズの方向性を決定づけるような第1話でこのポイントが弱まっているように感じました。具体的には3番目の「自らが暴走する」点。ただただ大変な境遇から山本耕史の「暴走」がないままドーンされてしまうという流れになっており、えっこの話って原作でもこうゆう感じだったのかな?と思ってアニメ版を見てみると、そちらではちゃんと「感じの良い奥さんや子どもに対して、きつくあたってしまう」という「暴走」が描かれていました。
(正確にはこの回は喪黒によって欲求が満たされた結果として暴走する回ではないのですが、満たされていたはずの日常に不満を持ち人に当たってしまうという小さな悪行があってそのしっぺ返しが来るという構造になっています。)
全体の尺の長さはそんなに変わっていないはずなのに、どうしてこうなったのか?
秋山と脚本のノリによるメタな笑いが過剰
これが原因になっているように思います。個人的に秋山さんは芸人として大好きですし、役者としても大河ドラマにも出演する実力のある方だと思いますが、初回の話では笑ゥせぇるすまんの本筋とは関係ないアドリブ的な掛け合いがたくさん盛り込まれていました。クスっと笑える感じはあるのですが、あくまでこれはフレーバー的なもの、ドラマの本筋の面白さとは関係のないメタな部分の笑いです。
この部分に尺を多めに使った結果、本筋のストーリーの部分が薄くなり、ただ不遇な人がドーンされておかしな目にあったという印象になってしまったように思います。
これは秋山さんが悪いんではなく、脚本とディレクションによるところが大きいと思います。
喪黒福造の初登場の洗面所のくだりもやり過ぎです。企画段階で色々おもしろいことを考えて練りに練った結果、一番ツイストの効いたネタを初回に持ってきた感じがするのですが、あの感じはドラマが3,4話くらい進んで、いろんな登場の仕方をした後に持ってくるようなネタだったと思います。これもディレクションの問題・・・
山本耕史さんのキャラもちょっとおかしい感じになっていたのも気になります。原作では厳格なカタブツのキャラ、山本耕史もカタブツなキャラのままでシチュエーション的に笑えてしまうみたいな方向性でもよかったのによけいな味付けが気になる・・・
エンディングテーマの「モグリズム」についても・・・おふざけ的なのが本編の外でやる分には好きにやってもらってもいいのですが、このネタが本編にも入ってきて夢グループの回に出てきて、さらに高嶋政伸の回にも出てきて、何度も何度も尺を使ってあの曲を聞かされます。そしてエンディングでも。正直退屈すぎてここまでついてこれている人何人いるのだろう?という疑問と話の外でやってくれよという思いが溢れます。
高嶋政伸さんなんて、抑圧された欲求とそれが開放されて溺れる様、その後の狂気まで演じるにはこれ以上ない役者さんだと思うんですが、それがモグリズムによって台無しにされている・・・
配信ドラマにしてはオチの刺激が弱い
初回の最後のオチもなんかちょっと弱くなっていました。なんかふくよかな女性っぽい方?が出てきた後お相撲さんに挟まれるというオチなのですが、あまりひどい目にあってる感じがしないというか、さほど狂ってないなと思いこれも原作のアニメを見てみると原作では「菩薩様のような女性の乳を吸う」というオチで、宗教的な要素と性的な要素が結びついた強烈なインパクトのあるものでした。
これがそのまま実写化できなかったというのはわかるのですが、今回はテレビでなく(テレ東が作っているにせよ)ネット配信のドラマなわけで、昨今のネトフリに代表される配信ドラマ、子どもには見せられないような強烈さがあるものが多い中で、これはちょっと残念だなと。見せられないほどではないにせよもう少しインパクトのあるテイストにしてもよかったんではないかと思いました。
夢グループの人たちが出てくる回はもうコメントのしようがないくらい酷いです。これも結局、夢グループの人たちが悪いわけではなく、そうゆうものを作ったディレクションの問題。
秋山喪黒はたしかにアニメそのまんまだけどそのまんますぎない?
目を見開いたり、口を開いたまま話したり、確かにアニメの絵はそんな感じだし笑い方もあのまんまなんだけど、それって実写でそのままやる必要あるの?という疑問も湧きます。
前述の笑ゥせぇるすまんの本質的な面白さを追求するならば、いっそのこと全く違う喪黒福造像でシュッとした俳優さんがやるという方向性だってあったかもしれない。いっそのことめちゃめちゃイケオジの俳優にするとか。
というような感想を振り返っていたらそういえば最近、笑ゥせぇるすまんっぽい作品をハリウッド映画で見たような?と思って思い出したのが
こちら。これのほうがよっぽど笑ゥせぇるすまんやってて最高に面白かったので、見てない方にはこちらをおすすめしたいと思います。
笑ゥせぇるすまん実写化するならこれくらい本気でやってほしかった。




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